私的紛争を裁判に持ち込んでも期待通りの結果にはならないわけ

裁判所は真実を追求してくれると思っている人達

ネット上に限らず争いが起きた時、

誹謗中傷だ、訴える、との言葉が飛び交います。

もちろん、双方ブラフ(脅し)であることはわかるのですが、

民事訴訟についてもう少し理解があればいいのになあと思うのです。

私は裁判所に提出する書類を作成する仕事も行っています。

とにかく裁判官に読んでもらわなければならず、

そのためにいろいろ気を遣っています。

なぜかというと、裁判官は超多忙だからです。

 

少し古い資料ですが(日本弁護士連合会、2010年3月)、

大都市の裁判官は、一人あたり単独事件を200件、

合議事件を約80件抱えているそうです。

10年前でこうなのですから、現在はもっと増加していると思われます。

さらに、毎月約45件の新件が増えていくのですから、

未済事件は増えていくのです。

そのような状況で裁判官の負担はどんどんふえていくでしょう。

 

それでなくても訴訟件数は年々増えつづけ、

日本弁護士連合会の統計によると2018年の民事訴訟、

家事調停の事件数を合わせると全国合計274,236件、

弁護士数40,934人で割ると約6.69ですから、

弁護士一人につきおよそ7件の訴訟、調停事件を抱えていることになります。

それでも、弁護士数についてはここ50年で約4倍に増えていますが、

裁判官の数は驚くことに50年前からほとんど増えていません。

 

さらに、ここが重要なのですが、

 

民事事件は「私的紛争」と呼ばれ、

裁判所が原告や被告に代わって真実を追求してくれるわけではありません。 

 

私たちの持っている一般的な裁判所の印象は、

TVドラマで描かれているように、

真実を追求し正邪を振り分けてくれるものと思いがちですが、そうではないのです。

「私的紛争」つまり、「けんか」なのですから、

裁判所は積極的に当事者に介入することはなく、

あくまでも受け身的に提出された証拠を調べ、

裁判官の自由な心証で判断するだけです。

 

ですから、ネット上の誹謗中傷の類を「訴える」というのは、

刑事事件に発展するなら別でしょうが、

実際に抱えている事件と比較した上の重要度で判断されることは間違いないでしょう。

実害が及んでいる現在進行中のリアルでの事件と、

双方顔も名前も伏せた状態でのネット上での誹謗中傷論争。

殺人的多忙にある裁判官に、それらの事件を同列に扱えというのでしょうか。

それとも弁護士費用を払ってでも訴訟を起こすのであれば別ですが。

まあ、訴えたとしても和解勧告で終了です。

そのような案件で、裁判官を煩わせてしまうことについて

想像力が働かないのであれば非常に残念なことです。